時と狭間 第5話

「また公園か?」
 私が今日、最初に訪れた公園だ。相変わらず人の気配がない。まだ何かあると言うのだろうか。
「お父さん、お父さん」
 公園の入り口から、小さな子供が駆け寄って来る。一瞬、昇平かと思ったが、あれは女の子だ。昇平ではない。だが、恐らくまた私に関係する人物なのだろう。
「お父さん。探したんだよ」
 私を父と呼ぶこの少女は、とてもかわいらしかった。
「君はどこの子? お父さんを探しているのかい?」
 少女と同じ目線になるよう、しゃがむ。
「お父さんはお父さんだよ」
 この子の父と私は似ているのだろうか。いや、この子は私に関係する子だろう。見た目的には昇平と同い年くらいだ。昇平の友達か?
「君、もしかして昇平のお友達かい?」
「お兄ちゃん? お兄ちゃんはお兄ちゃんだよ」
 話しにならない。昇平と話すのとはわけが違う。相手は見ず知らずの女の子だ。一体、この子が何だと言うのだろう。何年も前に亡くなった子か?
「ねぇ、お父さん。早く家に帰ろうよ」
 少女は私の腕を引っ張った。
「ちょっと待ちなさい。君の名前は? どこに住んでるの?」
「ひどいなぁ。一人で帰っちゃうよ」
 そう言って走り出そうとする少女を、急いで止める。いくら誰もいないからと言って、こんな夜に、子供一人で帰らせるというのは気が引ける。
「じゃあこうしよう。名前を教えてくれれば、家まで連れて行ってあげよう」
「変なの。優衣だよ。優しい衣で優衣。お父さんがいつもそう教えてくれるんだよ」
 優しい衣と書いて優衣か……聞き覚えがない。家の近所にも、こんな子はいなかったはずだ。
「あ! お母さんが呼んでる。もう知らないからね。お父さんがお化けに襲われても知らないからね」
 少女は私にそう告げると、さっさと公園から飛び出して行ってしまった。一体、あの子は誰だったのだろう。
 優衣……私のことを父だと言い張っていたが……。
 そう思った時、また睡魔に襲われた。確信はないが、なとなく、これで終わった気がする。とても長い悪夢が、やっと終わったのだ。