時と狭間 第4話
ここはどこだ? 最初は自分の家。そして公園に行き、学校に飛ばされた。ここは家の中だ。誰の家だ? 知らない人か? いや……見覚えがある気がする。懐かしい感じのする家だ。そう言えば、私の実家もこんな家だった。もしかして、ここは実家か? だが、そんなことがありえるのだろうか。ついさっきまで中学校にいたのだ。やはり、私は疲れているのだろうか。
「隆介。帰っていたのか」
背後から突然声が聞こえた。私は恐る恐る振り返る。
「父さん……」
昔とまったく変わらない顔の父が立っていた。やはり、ここは私の実家なのだ。
「何もないが、茶でも飲んでけ」
「いや、父さん……」
止めようとしたが、父はもう台所に向かっていた。落ち着かなければいけない。あれは父だ。だが、そんなことはありえない。あってはならないことだ。
「ほら、飲め」
私は父から渡されたお茶を飲んで、必死に落ち着こうとする。
「今はどうしているんだ。仕事は順調か?」
「あ、うん。順調だよ。結婚もしたし、子供もいる」
頭の中でこの状況を整理しながら、私は答える。
「顔色が悪いな。どうしたんだ?」
「何でもないよ」
そう言って、お茶を飲み干す。
「実の父親を騙そうなんて、お前には不可能だ。何があったんだ?」
もう、話してしまっても良いのだはないだろうか。
「僕が今日起きた時から、僕か、この世界が変なんだ」
「そうか」
父は平然とした表情で話を聞く。
「僕の昔の同級生に二人会った。そして、父さんにも。でも、それ以外の人には会ってない。妻も、子供もいないんだ」
そこで一度止める。父は黙っていた。
「それに、ありえないことが起こりすぎている。私は公園にいたのに、ちょっと寝ただけで中学校に移動していた」
「少し、落ち着かないか?」
父がそう言ったが、私は続けた。
「中学校で昔の友達と会ったと思ったら、今度はここだ。そして、父さんは今、目の前にいる。でも、こんなことあるわけない。最初は夢だと思った。でも、お腹だって空くし、ちゃんと時間だって経っている。僕は頭がおかしくなったのか?」
私は今までの不安感を爆発させた。
「隆介、やはり、何かあ――」
「父さんもだ。父さんがここにいるなんてことが、絶対にあってはならないことなんだ」
父がまた止めようとするが、私はもう止めなかった。
「父さんは……父さんは、何年も前に死んだじゃないか……」
そこまで言って、私はやっと気が楽になった。はっきりと言えたからだ。しかし、父は黙っている。父は何年も昔、ここで息を引き取った。だから、私の夢じゃない限り、ここに存在すること自体がありえないのだ。
「なぁ、隆介……お前もこっちに来ないか?」
「え?」
父の突然の言葉に驚いた。
「確かに死んだ。何年も前に」
父は認めた。自分が死者であることを。やはり、この世界は狂っている。きっとこれは、悪い夢だ。
「母さんも待ってるぞ」
私は静かに父に告げた。
「僕にはまだやることがあるんだ」
「そうか。お前には、幸せに生きてほしい……」
父はそう言うと、霧が晴れていくかのように消え去った。
「父さん……」
これで私の夢はもう終わりかと思った。だが、またもや辺りの景色が変わる。
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