時と狭間 最終話

 目を開けると、今日子と昇平が私を覗き込んでいた。そばには数人の医者たちがいた。ここは、病院か?
「昇平、お父さんが目を覚ましたわよ!」
「お父さん!」
 二人は目に涙を浮かべている。一体、どうしたのだろう。
「何かあったのか……どうして病院に?」
「高木さん。あなたは家で突然倒れて、病院に搬送されたんです。もう駄目かと思っていましたが……まさに奇跡だ」
 家で倒れて、病院に搬送?
「あなた。実は、話したいことがあるの」
 未だに涙を浮かべながら今日子が話しかける。
「何だ?」
「私、妊娠したのよ!」
「え?」
 そこで、私は全てを悟った。私が見ていた夢は、倒れてから目を覚ますまでの間だ。生と死の境目をさまよっていたのだろう。そして、あの少女は……。
「男の子だった時の名前はもう考えてあるの。だからあなたには、女の子だった時の名前を考えてほしいの」
 考える必要はなかった。もう決まっている。
「優しい衣と書いて、優衣だ」

end...