時と狭間 第1話
誰かの声が聞こえた気がして、私は目を覚ました。もちろん、自分のベッドの上だ。寝ぼけながらも、サイドテーブルにある腕時計を手に取る。もうすぐ昼の一時だ。
「はぁ、こんな時間まで寝ていたのか」
誰に言うでもなく、一人でそう呟く。そして、夢だったのかどうかも定かではない声を思い出そうとする。あの声は妻だ。『実は、話したいことがあるの』と言っていた気がする。彼女は、一体何を話そうとしたのだろうか。そう思い、私はリビングに向かった。
「今日子、いないのか?」
家から人の気配が全くしない。それも当然だろう。今は昼の一時だ。今日子は息子の昇平と、公園へ遊びに行ったのかもしれない。
念のため、家の中を探し回ったが、誰もいなかった。できれば、昼飯くらいは作っておいてほしかった。なぜなら、私は料理をしたことがない。おにぎり位なら作れるだろうと思い、台所に向かうが、肝心のご飯がないことに気付く。そこで、私は公園に行くことにした。
空を見上げると、雲一つない青空が広がっている。やはり、今日子は昇平と公園に行ったのだろう。
それにしても変だ。近所の商店街には、人が一人もいない。それどころか、店はどれも閉まり、道路には車一つ通っていない。今は昼の一時のはずだ。誰もいないはずはない。今日は何かのイベントでもあるのだろうか? 私の知るかぎりでは、そんなものはなかったはずだ。そういろんなことを考えている内に、私は公園に着いた。
「今日子、昇平。どこにいるんだ」
子供の遊び声は一切なく、ただ私の声だけが公園にこだました。何かがおかしい。まるで、私以外の人間がいなくなってしまったみたいではないか。だが、そんなことが起こりうるのは、小説や映画だけの話だ。なら、一体どうして? 私は近くにあったベンチに座り、落ち着こうとする。しかし、次第に睡魔に襲われ、ついには眠ってしまった。
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