まさみ

 私の名前はまさみ。私はテレビゲームの中で生きているの。毎日男の子が私のことを操ってるわ。この名前は彼がつけてくれたの。
 このゲームはRPGよ。私はいつもモンスターを倒してレベルというものをあげてるの。
 本当はこんなことしたくないんだけど仕方ないの。だって私はゲームの世界でしか生きることが出来ないから。
 今は彼がポーズをしているから私は自由なの。でも休憩をやめた彼は、きっとポーズを解いてゲームを再開するわ。
 昔はどうにかここから抜けられないか試したことがあったわ。でも無駄だった。私は彼がゲームを起動した時に目が覚め、彼がゲームをやめたら眠ってしまうの。彼のいる世界へ行こうとしたこともあったわ。でもガラスのようなものが一面に貼りつくされていて、ここから出ることは出来なかった。

 今日は彼の友達が遊びに来てるみたい。今、その子にコントローラーを渡したわ。
 まあ、なんて下手なのかしら。私の体力がどんどん減っていく。とても痛いわ。今にも死にそう。
『GAME OVER』
「お前下手くそだな」
「違うよ。このキャラが弱いんだよ」
「言い訳はいいから俺にまかせろ」
 あぁ、死んでしまったわ。でもこの子ひどいわ。そこまで言わなくたっていいのに。
 私は死んでも何度でも蘇ることが出来るの。でも彼の世界ではそれが出来ないらしいわ。

 数時間遊んで彼の友達が帰ったあと、彼はしばらく夢中になって遊んでいた。
「さっきはごめんな。お前が弱いわけないのに」
 彼はとても優しいわ。私のことをとても大切にしてくれてるのよ。そんな彼のことを、私はいつの間にか好きになってしまったわ。
 今、私は魔王に戦いを挑んでいるの。魔王はとても強いわ。彼が何度挑んでも倒すことが出来ないの。それでも彼は挑戦する。
「私を倒そうとしたって無駄だぞ、まさみ」
「いいえ、そんなことないわ。私はあなたを必ず倒す」
 そして戦いは始まった。彼はまず、魔法を使って私にバリアを張ったわ。そして次に剣を装備して攻撃をするの。今日こそ倒してやるわ、魔王。
 順調に魔王の体力を減らし、ついに倒すことができた。
「そんなバカな。この私が負けるだと」
「やったー、ついに倒したぞ!」
 彼がとても喜んでるわ。それも当然よ。魔王には二十回以上挑んではやられたもの。
 今エンドロールが流れてるわ。私の今までの戦いがここで見れるの。
 エンドロールが終わると、彼はクリアデータを保存した。
「これでやっと次のゲームができる」
 どういうことかしら。もうこのゲームはしないということ?
 彼はゲーム機の電源を切ろうとしている。そんな、もう私は永遠に目覚めることはないの? そして彼に一生会うことができないの?
『プツンッ』