二度あることは三度ある
今日の星占いは十二位だった。まったくついてないなぁ。女性に注意しろって言ってたけど、どういう意味だろう。
がっかりしつつも、ほんの少し希望を残しながら俺は出勤する。
駅のホームを歩いていたら、前から美人な女性が歩いてきた。いつの間にか、俺はその女性にぶつかっていた。
「すみません……」
彼女は小さな声でそう言った。
「こちらこそすみません」
俺もそう言いながら、彼女の鞄から落ちた荷物を一つ一つ拾う。いつもなら、ぶつかっても無視していたところだが、今回は違う。相手が美人だから少しでも良い印象を持ってもらわないと。
すべて拾い終えると、彼女は一言お礼を言った。そして俺たちはそれぞれの行く道を歩き出した。
満員電車の中で、俺は運よく女性のそばにいた。彼女からはとてもいい香りがする。
何度も揺れるたびに彼女にぶつかった。決して痴漢をしているわけではない。
向こうもこっちに気があるのか、何度か目が合った。変質者だと思われない程度に、俺は微笑む。
先ほどの女性は、あまり身だしなみに気を付かっている感じではなかったが、彼女はちゃんと自分に似合う服を着ていた。
彼女は俺が降りる駅の二つ前で降りてしまったが、そんなことはどうでもいい。もしまた同じ車両に乗ったら、彼女が降りたときに声をかけてみようかな。
俺は会社帰りにラーメン屋に寄った。隣には俺好みの女性が座っていた。俺は勇気を出して声をかけてみる。
「もしよかったら少し話しませんか?」
さすがにこれはまずかったか。ああ、失敗したな。
「え……ええいいですけど」
よし! よくやった俺。占いのことなどすっかり忘れた俺は上機嫌になった。
「今食べてるのってしょうゆ味?」
「そうですよ」
「俺もしょうゆ味好きなんだよね」
「そうなんですか。奇遇ですね」
その後もうまく会話が進んだ。このままいけば、メルアドが聞けるかもしれないな。
二度目の勇気を出して聞いてみた。
「よかったらメルアド交換しませんか?」
返事は――YESだった。
まじ最高! このまま彼女と付き合ってゴールインしちゃったりして。さすがにそれは考えすぎか。
家に帰ってケータイいじりながらスナック菓子を食べていたら、チャイムが鳴った。
次はなんだ? 俺は妄想を膨らませながら玄関に向かう。
ドアを開けると、目の前にいたのは普通の女性だった。
なんだ、とガッカリしつつも、相手に失礼の無いよう「なんすか?」と尋ねる。次の瞬間、俺は刺されていた。
え? どういうこと? 一体何が起こっているのか理解できなかった。
「なん……なんだよ」
俺は激痛を堪えながら必死に声を出した。そして俺はその場に立ち崩れた。
copyright (C) ベリガイ倶楽部(仮) All Rigths Reserved.